バングラデシュ人、本場のカレーで激励 大船渡の避難所

朝日新聞 2011年3月31日より抜粋
【写真】避難所でココナツカレーの炊き出しをするバイタリクさん=大船渡市、林写す

岩手県大船渡市立末崎小の避難所でこのほど、来日20年目のバングラデシュ人のハッサン・バイタリクさん(46)が本場のカレーを振る舞った。「自分も日本で暮らす人間。何か行動するのが当然」と訪れたといい、子供たちは大きな鶏肉入りのココナツカレーをうれしそうにほおばった。

イタリア料理店を経営するバイタリクさんは、外国人を支援するNPO法人「APFS」(東京都板橋区)の理事。同法人は外国人の協力会員が約3400人おり、04年の新潟県中越地震では住み込みで家屋の修復作業などを手がけたという。

震災で寒い避難所で被災者が身を寄せている様子を知り、加藤丈太郎・代表理事(29)に相談、知人の県職員から紹介された末崎小で炊き出しすることになったという。

2人は仲間と計5人で水300リットルと米75キロなどを積んだワゴン車に乗り込み、東京から約12時間かけてたどり着いた。作ったカレーは避難所2カ所で計500食。大鍋からは香辛料やトマトの独特な香りが立ち上り、被災者は「震災後初めてカレーを食べた」と喜んだ。中には2杯半をぺろりと平らげた人もいた。

「家族みんな無事だったけれど、家が流された」と話す子供に、バイタリクさんは「大人になったら家を建ててあげたらいい。生きていれば何でもできる」と声をかけ、温かいカレーを手渡した。

避難所の新沼利雄・副統括(59)は「こんなに腹いっぱい食べたのは久しぶり。ありがたい」。加藤さんは「衣類の仕分け作業など、長期滞在して被災者の要望に応える活動をしていきたい」と話していた。(林敏行)