「在留特別許可に係る市民懇談会」を発足させます

市民懇談会1
市民懇談会2

メンバーで事例を検討しました
APFSでは、非正規滞在者の正規化に向けた支援を継続して行っています。

2014年末までは、退去強制令書(国に帰れという命令)を発付された非正規滞在者が、発付後の状況変化を元に「再審情願」(法務省入国管理局に再度の審査を求める行為)を行い、実際、複数の事例で在留が認められました。しかし、2015年以降、ほとんど在留が認められていません。

また、「在留特別許可」(法務大臣が非正規滞在者に在留を認めること)の件数も減少傾向にあります。「在留特別許可に係るガイドライン」は存在するものの、明確な基準は未だ存在せず、その運用の実態は不透明です。さらに、親子を分離するような判断が現に法務省―入国管理局よりなされています。長い間、将来の見通しが立たず苦しんでいる家族・個人が存在しており、問題解決が急務となっています。

APFSでは、非正規滞在者をめぐる訴訟に取り組んでいる弁護士、社会学などの研究者、地域で非正規滞在者を支えている「支援する会」の方々にお集まりいただき、先の「ガイドライン」をもとに在留特別許可
のあり方を検討することを目的として「在留特別許可に関する意見交換会」を2016年9月1日(第1回)、10月5日(第2回)、12月9日(第3回)の3回にわたって行ってきました。

第1回では、弁護士より、「裁判例の傾向」が紹介され、「在留特別許可を認めない処分」を不服とする取消訴訟は多くあるが、勝訴例は少ないとの報告がありました。その原因としては、法務大臣の裁量が極めて広範に認められていることが大きな要素として挙げられました。しかし、2001年以降、いわゆる比例原則を根拠に勝訴した判例もみられます。研究者からは、「法律やガイドラインは、普遍性をもつべきなのにそうでないのが不思議」、「日本は国際人権条約に加盟していながら、人権条約に反している。子どもの最善の利益を考えるべきなのに裁判所の判断はこれに則していない」という指摘がなされました。

第2回では「在留特別許可に係るガイドライン」の「普遍性」を検証するため、いくつかの事例を「ガイドライン」に沿って評価をすることが決定しました。また、法務省の「出入国管理政策懇談会」に「在留特別許可」に係る提言を行う、ということも提案されました。 

さらに、ヨーロッパ人権裁判所における事例の検討、国連自由権規約委員会が来日して審査を行う際に、非正規滞在者の現状を伝えてみてはどうかという意見も出されました。

第3回では、いくつかの事例を「在留特別許可に係るガイドライン」に沿って、評価した結果が報告されましたが、「積極要素」、「消極要素」をどのように反映するか、評価者によって大きく食い違い、あらためて在留特別許可の許否判断の難しさが鮮明となりました。

今後は、この会合を「意見交換会」で終わらせず、出入国管理政策懇談会等へ具体的な提言を行うことを目指し、会合の名称を「在留特別許可に係る市民懇談会」として、継続して活動していくことが確認されました。

これからの市民懇談会の課題として、出入国管理政策懇談会における過去の議論のフォロー、諸外国のアムネスティ(一斉合法化)や在留特別許可などを専門に研究をしている研究者を招聘し、ヒアリングなどを行っていきます。

「在留特別許可に係る市民懇談会」メンバー(2017年1月10日現在)
水上徹男(立教大学社会学部教授)※座長
児玉晃一(弁護士)
駒井知会(弁護士)
野呂芳明(立教大学社会学部教授)
付 月  (茨城大学人文学部社会科学科准教授)
松島義徳(フィリピン人家族を支援する会 代表)
山村淳平(港町診療所 医師)
渡辺明子(イラン人母子を支える会 代表)
渡辺千恵(弁護士)

加藤丈太郎(APFS代表理事)
趙憲来 (APFS正会員)
吉田真由美(APFS副代表理事)
吉成勝男(APFS理事・相談役)