在日アジア人支援NPO法人が始動 28歳代表走る 超過滞在、子育て…悩む人とともに

東京新聞(朝刊)2010年9月20日より抜粋

超過滞在、就労、子育てなど、さまざまな問題を抱える在日アジア人を支援する市民団体「APFS」(東京都板橋区)が今夏、NPO法人になった。仕事を辞めて代表理事に就いたのは、若手メンバーの加藤丈太郎さん(28)。19日に同じ区内に事務所を移して新たなスタートを切った。「悩む人の目や手になって、ともに走る存在であり続けたい」と意気込んでいる。(岡村淳司)

今月中旬、都内に住む30代のミャンマー人女性が事務所を訪れた。超過滞在で国外退去を求められたが、在留資格がある小学生の娘を一人で育てていて日本を離れられない。離婚や借金など複雑な事情が絡み合う。加藤さんはじっくりと話を聞き、入国管理局との折衝を約束した。

雑誌で“駆け込み寺”のような存在としてAPFSを知ったという女性は「日本の制度がよく分からないので、とても頼りにしている」と話す。加藤さんはこうした案件を30件ほど抱え、日々駆け回っている。

加藤さんは大学生だった2003年、卒論の取材を機にAPFSに参加。 職場で指を切断しても明るさを失わないバングラデシュ人の男性や、日本で生まれた子どもを必死で守ろうとするフィリピン人家族に心を打たれ、活動にのめりこんだ。今年3月には「一本に打ち込もう」と東京外語大職員の仕事を辞め、7月にAPFSがNPO法人に認証されると代表理事を引き受けた。

NPO法人になったことで官民の助成金が受けやすくなり、行政から相談業務を受注するなど新たな道も開けた。「問題をたらい回しにしない『解決型相談』を目指す」と加藤さん。外国人親子を対象にした日本語教室など、今後はより地域に密着した取り組みを始める方針だ。