スリランカとベトナムへのチャーター便による強制送還への抗議声明

2014年12月18日、スリランカ国籍の26名とベトナム国籍の6名、計32名の非正規滞在者がチャーター便によって強制送還されました。送還されたのは25~64歳の男性31人と女性1人でした(朝日新聞、2014年12月20日)。

法務省―入国管理局は、既に2013年7月6日にフィリピン国籍の75名と、2013年12月8日にタイ国籍の46名をチャーター便で送還しています。2013年7月25日~7月28日にAPFSがフィリピンで調査を行った結果、送還された者はいずれも仕事を見つけることが出来ず、生活に困窮していました。また、日本に居住しているパートナーや実子と離ればなれにされ、心身ともに疲弊しきっている者も存在しました。さらに、送還の途中で打撲した者がいることも判明しています。フィリピンへのチャーター便での送還については、2013年11月5日に国会においても質問がなされ、人道上の配慮、人権擁護への疑義が問われたばかりです。 

なお、2010年3月22日、APFSで在留特別許可取得に向けて支援をしていたABUBAKAR AWUDU SURAJ(スラジュ)さん(ガーナ国籍)が国費送還中に死亡し、この事件に関しては国家賠償請求訴訟が現在も継続しています。一審判決では、入管職員による過剰な制圧行為が認められました。送還時の入管職員の行為が問題視されている事件の真相が未だ究明されていない中で強制送還が再開されていること自体、暴挙と言わざるを得ません。

12月18日のスリランカとベトナムへの32名の被送還者の中には難民と認められなかったことが確定したばかりの人もおり、「6カ月以内ならば難民不認定取り消し訴訟を起こすことができるのに、権利を剥奪された」という批判も浮上しています(毎日新聞、2014年12月19日)。今回の一斉強制送還は、このように難民の認定を求める裁判の準備中の人に加え、一歳未満の子どもを含む家族と引き離された人も含まれており、「人道上、問題がある」と非難されています( 日本経済新聞、2014年12月20日 )。また、被送還者の一部は、出身国に生活基盤がなく、路頭に迷う可能性もあります。

さらに、The Japan Times(2014年12月20日)によれば、 超過滞在者のみでなく、庇護希望者がチャーター便で送還されたのは初めてのケースであったとのことです。難民認定されなかった被送還者の中に、政治的な亡命者や、駐日母国大使館の前のデモなど、実際に反政府運動に関わった経験を持つ者も含まれており、帰国後、迫害の危険に晒されることもあり得ます。この意味では、昨年の二回のチャーター便による強制送還と比べ、被送還者の福利への危害の可能性は著しく高いです。違法ではないとはいえ、このような一斉強制送還は、政府による権力濫用について疑問が沸きます。

そして、一般市民の目が届かないチャーター便での送還は、通常の航空機での送還以上に安全性に問題があり、被送還者の個別の事情を無視した一斉送還は人道上許されません。

APFSは今回のスリランカとベトナムへのチャーター便での強制送還に断固抗議いたします。

2014年12月22日
特定非営利活動法人 APFS(ASIAN PEOPLE’S FRIENDSHIP SOCIETY)