「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案」に対する声明

自民党及び公明党はヘイトスピーチに関して、2016年4月8日、参議院に 「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案」を提出した。法律案は、同年5月13日に参議院本会議を通過している。

APFSにおいて長きにわたり支援をしている非正規滞在者もヘイトスピーチの対象となってきた。2009年には、埼玉県に居住するフィリピン人女子生徒に対し、排外主義者が、生徒が通学をしている学校にまで押しかけ、ヘイトスピーチを行った。さらに、2016年に入ってからも、非正規滞在者へのヘイトスピーチがインターネット上でまかり通っている現状がある。ヘイトスピーチが行われていることに、多くの心を非正規滞在者が心を痛めている。以上の状況を踏まえると、現行の法律案には看過できない問題がある。

法律案の第2条は、法律の適用対象を本邦外出身者のうち「適法に居住するもの」に限っている。この点に対し、APFSは強い懸念を表明する。現行の法律案では、非正規滞在者(法務省入国管理局は「不法滞在者」と定義)へのヘイトスピーチが規制の対象とならず、非正規滞在者へのヘイトスピーチが公然と行われる状況を生み出しかねない。非正規滞在者の中には、日本に生活基盤を確立し在留特別許可を求めている者、母国からの迫害を逃れ難民を申請している難民申請者も存在する。

「差別的言動の解消に向けた」法律案が、その対象において差別をしているのは、大きな自己矛盾をはらんでいる。対象を「適法に居住するもの」に限定をしている点を、法律案から削除する旨を強く要求する。

「適法に居住するもの」が削除されない場合であっても、附帯決議において「第2条が規定する『本邦外出身者に対する不当な差別的言動』以外のものであれば、いかなる差別的言動であっても許されるとの理解は誤りであり、本法律案の趣旨、憲法及び人種差別撤廃条約の精神に鑑み、適切に対処する」とされていること(第1項)を踏まえ、非正規滞在者に対する差別的言動は断じて許されてはならない。

日本政府も批准している「人種差別撤廃条約」第4条(b)は、「人種差別を助長し及び扇動する団体及び組織的宣伝活動その他のすべての宣伝活動を違法であるとして禁止するものとし、このような団体又は活動への参加が法律で処罰すべき犯罪であることを認めること。」を定めている。この趣旨に鑑み、今回の法律案では記述が見られなかったが、今後、差別的言動に対する、処罰付の国内法の制定が必要であることを強調したい。

2016年5月16日
特定非営利活動法人ASIAN PEOPLE’S
FRIENDSHIP SOCIETY(APFS)

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