バングラデシュ人家族に画期的な判決が出ました―APFSは国が控訴しないことを求めます

判決

原告母と手をつなぐ息子
2015年6月16日、東京地方裁判所において、法務大臣がバングラデシュ人家族に下した「退去強制令書発付処分」を取り消すという判決が下りました。
原告は1997年に初めて日本に入国以来、日本語の習得に励み、呼び寄せた奥さんと息子との生活のために必死に働いてきました。しかし入国の経緯に問題があり家族全員に退去が命じられ、これに対し原告家族は国に対して処分の取り消しを求めていました。

法務省―入国管理局は、原告父が難病である潰瘍性大腸炎を患っていること、息子が精巣に異常があり手術を必要としていたこと、原告母が二人を看護する必要があったことを斟酌せずに、在留を許可しませんでした。しかし今回の判決により入国管理局の判断の妥当性が否定され、退去強制処分の取り消しが認められたのです。

バングラデシュ人家族は、日本で長く暮らし、生活の基盤は既に日本にあります。息子は幼稚園に入園し、将来とも日本で暮らせる事を強く望んでいました。今回の判決は、このバングラデシュ人家族に大きな希望をもたらしました。
今回の判決で特に注目すべきは、原告父の潰瘍性大腸炎の今後の治療に際し日本での治療の必要性を強調している点にあります。「バングラデシュに帰国した場合、適切な薬剤治療に必要な数量を入手して効果的治療を継続すること、潰瘍性大腸炎の症状が再燃した場合に適切に治療すること、症状が重症化し外科的治療が必要となった場合に適切に治療を行うことは、いずれも困難を伴うと言うべきであり、本邦での治療を必要とする立場にある」とし、入国管理局の「海外でも生活環境に留意すれば症状は悪化しない」、「(バングラデシュの)公立病院を介すなどして医薬品を継続的に入手することは可能」とする判断と著しい対比を見せました。

また地裁は「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(社会権規約)12条1を挙げ「この規約の締結国は、すべての者が到達可能な最高水準の身体及び健康を享受する権利を有することを認める」と定めているとし、「病気の場合にすべての者に医療及び看護を確保するような条件の創出」を必要とするという条項を挙げ「条約の趣旨から東京入管が原告家族に在留特別許可を与えるべきではないとした判断は社会通念に照らして著しく妥当性を欠いている」とする判断を下しました。これは「潰瘍性大腸炎に罹患している事実は在留許可に関する判断において、格別斟酌しなければならない事情に当たらない」とした入国管理局の判断を真っ向から否定するものとなりました。

今後、被告の国側の控訴も考えられますが、今回の「健康を享受する権利」を外国人にも認めた画期的な判決は、バングラデシュ人一家にとっての光明となるとともに、日本で暮らす同様な立場の外国人にとって新たな可能性を拓くものと思われます。
バングラデシュ人家族は病気の治療を続け、日本社会の一員として生活することを希望しています。APFSは国が控訴しないことを強く求めます。