法務省入国管理局に改定入管法に関するヒアリングを行いました

ヒアリング

法務省入国管理局へのヒアリングの様子
2012年7月9日(月)に、改定入管法が施行されます。施行を前に、入管法改定後の運用について不明な点を明らかにするべく、2012年6月29日(金)にAPFSでは法務省入国管理局へのヒアリングを実施しました。

APFSからは3名が出席しました。また、服部良一衆議院議員に同席をしていただきました。法務省入国管理局からは、入国在留課・審査指導官後閑厚志氏他4名が対応しました。

以下、APFSからの質問と法務省入国管理局からの回答の概要です。

Q1.東京入国管理局では、「意思確認書」を用い、「入国管理局が私の身分情報等を私の住居が所在する市区町村に通知することに」同意を求めるという運用が2012年6月から始まっています(2012年6月、東京入国管理局違反審査部門にて確認済)。 (1)何に基づいて、(2)どのようなスケジュールで「身分情報等を」市区町村に通知をするのかについてご回答ください。
A1
(1)附則第60条1項に基づく。仮放免許可者の行政サービス上の利便性を考慮したものである。

附則第60条1項
「法務大臣は、現に本邦に在留する外国人であって入管法又は特例法の規定により本邦に在留することができる者以外のもののうち入管法第五十四条第二項の規定により仮放免をされ当該仮放免の日から一定期間を経過したものについて、この法律の円滑な施行を図るとともに、施行日以後においてもなおその者が行政上の便益を受けられることとなるようにするとの観点から、施行日までに、その居住地、身分関係等を市町村に迅速に通知すること等について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」
(2)地方入国管理局から、毎月1回、市区町村に郵便で通知をする。仮放免許可日も通知される情報に含まれる。

Q2.「外国人登録証明書は、施行日から3月以内に法務大臣に返納しなければなりません。」とあります(QA33-2)。また、「最寄の地方入国管理官署に持参していただくか、次の事務所に郵送してください。」とありますが、殆どの当事者はこのことを知らないと思われます。外国人登録証明書の具体的な回収方法について定められていることがあればお知らせください。
A2.当事者より市区町村に返納があった場合、市区町村に預かってもらい、入国管理局に送ってもらうということも考え得る。

Q3.在留期限が改定入管法施行直前で、現在、在留資格更新許可申請中の当事者が、在留期限後の証印受取期日を指定されたハガキを受け取りました。証印の受け取り期間が在留期限後であるため、この当事者は非常に心配しておりました。
恐らく、現在が在留カードへの移行期にあるため、上記のような対応が取られていると推察しています。在留カードへの移行期に在留資格更新・変更を迎える当事者への対応・説明に問題がないかどうか、どのように考えているかをお聞かせください。
A3.特に問題はないと考えている。

Q4.「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」及び「定住者」に「6月」の在留期間が設けられることになりました(QA153)。 どのような場合に「6月」の在留資格となるのかについて具体的にご回答ください。また、「1年」以上の在留資格を有していた方が「6月」に変更となった場合、国民健康保険等、今まで享受してきた行政サービスを受けられなくなる可能性があります。この点についてどのようにお考えかをご回答ください。
A4.「6月」は元々、短期間在留する方を想定しているものである。

Q5.2012年6月1日に「在留期間5年を決定する際の考え方(案)」が貴局より出されました。定住者(告示第3~7号)について、「5年」が認められるための条件として、「一定以上の日本語能力(法務大臣が告示で定める日本語教育機関において6月以上の日本語教育を受けたもの,日本語能力検定N2に合格したもの(中略))を有しているもの」という項目があります。しかし、当事者の多くは日本語教育機関に通うだけの、あるいはN2に合格するための時間的・経済的余裕がないと思われます。「永住許可に関するガイドライン」が現行のまま(「最長の在留期間をもって在留していること」という要件がある)であるのであれば、事実上、定住者(告示3~7号)が永住許可申請をする可能性を狭めることになると考えます。この点について貴局はいかがお考えでしょうか。また、「永住許可に関するガイドライン」を改訂する予定はあるのでしょうか。
A5.「定住者」等、身分に基づく在留資格の方が、永住申請をする際には、当分の間「3年」を最長とみなす運用を行う予定である。「永住許可に関するガイドライン」はすぐに改訂をする予定はない。

Q6.今回の移行に伴い、地方自治体が大きく混乱している様子が伝わってきます(東京弁護士会、NGO等の調査結果より)。制度以降後も、地方自治体の窓口を外国人が来訪し、問い合わせをすることが考えられますが、地方自治体からの相談に常時対応できるような仕組みは既に整っているのでしょうか。
A6.仕組みは整っている。また、4月・5月には全都道府県において説明会を行っている。

Q7.「正当な理由がなく配偶者としての活動を継続して6か月以上行わずに在留していると、在留資格の取消しの対象とな」るとあります(QA115)。
(1)「配偶者としての活動」とは具体的にどのようなことを指すか明確にお答えください。
(2)夫婦関係は極めてプライバシーに関わることでありますが、「配偶者としての活動を継続して6ヶ月以上行わ」ないことをどのように調査されるつもりなのでしょうか。
(3)一時的に別居後、復縁をするケースもあり得ると思います。このような場合でも、別居期間が6ヶ月を超えていれば「配偶者としての活動」をしていないと解釈されますか?
A7.「配偶者としての活動」は法律上の婚姻のことを指す。事実関係を調査し、在留資格を取り消さないという運用も当然考え得る。

Q8.「配偶者の身分を有する者としての活動を行わないで在留していることについて,正当な理由があると認められるのは,どのような場合」か(QA138)ということに対して、「子の親権を巡って調停中の場合や日本人配偶者が有責であることなどを争って離婚訴訟中の場合などが該当する」と答えが挙げられています。
(1)男性(and/or)外国人が親権を取ることは容易ではなく、現実には「面会交流権」を巡って調停をすることが多いと考えます。「面会交流権」を巡って調停中の場合は「正当な理由」があることに考慮されると考えてよろしいでしょうか。
(2)外国人配偶者によるDVを有責として離婚訴訟が行われているが、外国人配偶者はDVを否認し、配偶者と離婚をしたくない場合は、「正当な理由」があることに考慮されると考えてよろしいでしょうか。
A8.離婚前であれば、「正当な理由」に近いものとして考えられる。「正当な理由」として考えられる事例は、法施行後に入国管理局のウェブサイトで公開する。離婚後、親権/面会交流権に係る調停を行ったとしても、離婚が成立しているため、在留資格変更をする必要がある。

今回の改定は、入管法制定以来の大きなものです。外国人当事者への周知は十分であるとはいえず、法改定後は、相当の混乱が生じることが想定されます。APFSでは、引き続き、不明な点が出てくれば明らかにしていきます。また、当事者からの相談を解決していきます。