5年後の日本を考えるワークショップ ―外国にのルーツを持つ女子高生の願い―を開催しました

ワークショップ

多くの皆さまにご参加いただきありがとうございました
2015年5月23日(土)、「5年後の日本を考えるワークショップ ―外国にのルーツを持つ女子高生の願い―」を無事開催することができました。

今回のワークショップには、総勢20名以上にご参加いただき、イラン出身の高校1年生サラちゃんと、サラちゃんのお母さんのお話をお聴きしました。

サラちゃんは、2歳の時、お母さんと一緒にイランから来日しました。ずっと日本で暮らしてきたので、彼女にとっての母語は日本語です。小学生の時は、容姿が日本人と違うことで、友達との関係作りに苦労したこともありましたが、相手に心を開いてもらえるよう、常に明るく接してきたそうです。

中学3年生になって、「非正規滞在」の大きな壁にぶつかりました。都立高校の受験ができないと通知されたのです。周りのお友達が受験の話をしている時に、自分は受験すらできないかもしれないという現実に、大きなショックを受けたといいます。最終的には、学校の先生や、支援の会のみなさんのサポートによって、都立高校の受験ができることになりました。金銭的な事情から、サラちゃんの高校進学への道は、都立高校のみ。絶対に受からなければならないというプレッシャーにも負けず、一生懸命勉強して見事合格することができました。合格の知らせを受けた時は本当に嬉しかった、とお話してくれました。

サラちゃんは高校生になって、新しい学生生活を楽しむ一方、「非正規滞在」であることの苦しさを日々感じています。

英語を勉強したいと思って国際コースを選んだけれど、海外の語学研修には参加することができない…本場の英語を学ぶことができない分、自分は何倍も努力しなくてはいけないと感じています。

また、保険に加入ができないので、医療費は全額負担となることを、サラちゃんは知っています。以前、口内ヘルペスになってしまった時、診療費や薬代で50,000円も払わなければならず、お母さんが大変な思いをしたことを覚えています。

様々な事情があって、在留資格の期限が切れた後も、お母さんはサラちゃんと一緒に日本に残ることになりました。サラちゃんが大きくなっていく一方で、自分は少しづつ歳をとり、健康など、将来への不安が募ります。しかし、何をおいても、サラちゃんの未来が明るいものになるよう、母としてサポートし続けたいと強く思っています。

サラちゃんに、こんな質問をしてみました。「在留資格がないことで、困難にぶつかって、悲しくて辛い思いもたくさんしたと思うけど、何を支えに乗り越えてこれたの?」

サラちゃんはこう言いました。
「私は、母のことをとても尊敬しています。母の存在が私の支えです。」

その後のグループワークでは、サラちゃん親子のお話を聴いて、何を感じ思ったか、参加者みんなで率直な思いを共有し合いました。ここに、いくつかの感想をご紹介します。

⚫︎親子の強い絆を感じた。サラちゃんは、この困難な状況を乗り越えるために、もっと自分が強くならなくてはいけないと言っていたが、変わらなければならないのは日本社会だと思う。

⚫︎周りに、在留資格がない外国人の話をした時、犯罪者だというネガティヴなことを言われた。そういうイメージを持つのは、今回の親子のように様々な事情で母国に帰れない当事者を知る機会がないからではないか。偏見をなくしていくには、地道だが自分の周りの人から伝えていくことが必要だと思った。

⚫︎ 日本の法律や制度に問題があることはもちろんだが、それ以前に、親子を引き離すという判断が日本で下されるという根っこのところに問題がある。親と子が互いに必要な存在であるという当たり前のことが、在留資格がない外国人には適用されないなんておかしいと思う。

⚫︎ 人間である以上、在留資格があるかどうか関係なく、子供は生活する地域の学校に行き、大人は家族を養うために働く。国籍や在留資格を基準として「外国人」を地域から排除するのではなくて、彼らも一市民であることを忘れてはいけない。

⚫︎ 今の日本の若い子たちは大人より考え方がやわらかいのでは?在留資格がない家族がおかれている状況を、若い子たちに伝えていきたい。

ワークショップの最後に、サラちゃんのお母さんが、清々しい笑顔で言ってくれたこと。
「今日は、本当に気持ちがすっきりしました。皆さんに私たちの正直な気持ちを聴いていただいて…意見交換もできて、とても嬉しかったです。」

誰にとっても安全で、自由に発言できる空間がそこにはありました。この空間が、5年後の日本社会に少しでも広がっているように…。私たちAPFSは、努力し続けます。