法務省にヘイトスピーチ解消及び在留特別許可に係る要望を行いました

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ヘイトスピーチ解消及び在留特別許可に係る要望
2016年10月5日(水)、APFSは法務省人権擁護局及び入国管理局に上記要望を行いました。要望は、有田芳生参議院議員の同席をもって実現をしました。

2016年6月3日、ヘイトスピーチ解消法(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)の第2条は、「専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの」とその対象を定めています。

ジャーナリストの池上彰氏は、「保護する対象は『適法に居住する日本以外の国・地域の出身者やその子孫』です。不法滞在者など適法でなく居住する人にも人権があります。この条文には『適法でない連中は差別しても構わない』という意識が感じられます。」と上記法律について指摘しています(2016年7月1日、毎日新聞朝刊)。

「適法に居住するもの」ではない非正規滞在者の中には、仮放免の状態を7~8年以上継続している者も存在します。「在留特別許可」数は、年々減少しており、2015年は約2,000件に留まりました。非正規滞在者をヘイトスピーチに晒し続けるわけにはいきません。ヘイトスピーチを収束させるためにも、その根源の一つである非正規滞在者の縮減が必要です。そのためには、退去強制だけでなく、「在留特別許可」の弾力的な運用が必要であると言えます。

以上を踏まえ、2点要望をしました。

1.非正規滞在者への差別的言動の防止に向けた方策を明確にしてください。
2.非正規滞在が差別的言動の原因になっています。長期定住している非正規滞在者に早急に「在留特別許可」を認めてください。

1.については、法務省人権擁護局・局付の谷中文彦氏より回答がありました。

外国人住民の人権擁護については、ヘイトスピーチ解消法が施行される前から、正規・非正規と対象を問わず、啓発をしてきたとのことでした。また、ヘイトスピーチ解消法において附帯決議(議決された法案に関して付される、施行についての意見や希望などを表明する決議)出されたことを受け、正規・非正規分け隔てなく、啓発活動を続けていく旨も述べられました。

APFSより非正規滞在者が人権相談窓口を訪れた場合、法の定める「適法に居住するもの」ではないが、相談を聞いてもらえるのかを問うたところ、相談は受け付けるとのことでした。ただし、法務省人権擁護局の説明からは、正規・非正規を問わず、どのような場合に相談事案が「人権審判事件」として立件をされるのかが不明瞭でした。APFSからは、外国人住民が人権相談をした場合どのように対処がなされるのか、道筋を明確に示す必要性を指摘しました。

また、外国人住民から人権に関する相談がどのくらい人権相談窓口に寄せられているのかを問うたところ、統計は取っていないとの回答でした。APFSからは、今後の施策を考える上でも、統計を取る必要があるのではないかという点を指摘しました。

法務省人権擁護局からは、ヘイトスピーチ解消法の条文を英語・中国語・韓国語に翻訳して、ウェブサイトに掲載している旨が説明をされました。APFSからは、より広報を充実させるべきであると要望しました。また、広報に、現に外国人住民から相談が寄せられているNPOを活用していくことを、提案をしました。

2.については法務省入国管理局審判課長の君塚宏氏より回答がありました。

非正規滞在者に対する差別的言動が、2ちゃんねる、yahooのコメント欄でなされている旨について、入国管理局も承知をしていました。APFSからは、ヘイトスピーチを収束させるためにも、非正規滞在者を縮減していくべきではないかと要望をしました。

また、APFSからは、日本には移民政策がない旨を指摘し、非正規滞在についてどう扱うかを移民政策の中で考えて欲しいと要望しました。入国管理局は、「immigration policy」は出入国管理政策とも移民政策とも訳されると回答しました。しかし、2016年1月28日の参議院本会議で安倍首相は「いわゆる移民政策をとることは全く考えていない」と明言をしています。両者の間の矛盾が浮き彫りになったと言えます。

APFSでは、引き続き、上記の問題について要望を続けていく予定です。