在留特別許可に係る意見交換会を行いました

意見交換会

多くの意見が寄せられました
非正規滞在者の支援を行う中で、退去強制令書発付後に、状況の変化を元に「再審情願」を行っても、在留特別許可が出にくい状況がここ数年続いています。また、APFSでは、親子のケースについて、親が帰国することを条件に、子のみに在留特別許可を与えることを法務省から示唆されているものもあります。APFSにおいて、弁護士、支援団体等に状況を確認したところ、同様の状況のようです。

この状況を打破すべく、弁護士、研究者、地域で非正規滞在者を支えてくださっている支援する会の皆さまにお集まりいただき、広く知恵を共有する「意見交換会」を行いました。

APFSが主催する「在留特別許可に係る意見交換会」が2016年9月1日、板橋区立グリーンホールにて催されました。会場には、長年、裁判を通じ外国人の権利擁護に尽力されてきた弁護士、日本における外国人問題に関心を寄せる研究者、在留特別許可を求める外国人を支援している人々、及びAPFSのスタッフが集いました。

冒頭、APFSの吉成相談役から趣旨説明があり、在留特別許可が認められないケースが増加している現状を踏まえ、今後如何に取り組むべきかについて活発な意見交換をしたい旨述べられました。

続いてAPFS加藤代表理事から在留特別許可の歴史的経緯、許可数の推移、及び許可が与えられないまま仮放免の状態におかれている人数の推移が示されました。

在留特別許可数としては2004年の13,229名をピークに、2013年は2,023名と激減しており、一方で仮放免者数は2010年の1,618名から2015年の3,606名へと、2倍を超える増加を示すデータが紹介されました。また、2013年の浜田和幸参議院議員(当時)の質問主意書に対する答弁書が示されました。答弁書によると、判断については「入管法(中略)に基づいて在留を特別に許可するか否かよりも更に広範な裁量(法務大臣)に委ねられるものであって、このような判断に当たってガイドラインを用いることは考えていない」とのことです。許可の可否において自らが示した指針に依拠しないとした法務省の姿勢が示されました。

更にAPFSの昨年来の運動の中で特に「親が帰国するなら子どもの在留を認める」とする「親子分離問題」が取り上げられ、マスコミ報道の後、賛否交えて大きな反響があったことが報告されました。

次に児玉晃一弁護士より、「在留特別許可をめぐる裁判例の傾向」が紹介され、在留特別許可を認めない処分を不服とする取消訴訟は多くあるが、勝訴例は少ないとの報告がありました。その原因としては、法務大臣の裁量が極めて広範に認められていることが大きな要素として挙げられました。しかし、件数は少ないながらも2001年以降、いわゆる比例原則により、強制送還によって失われる原告の利益とそれによって得られる国の利益を比較衡量した場合、前者が上回るとして勝訴した例も散見されるとのことでした。この他、2003年11月19日の東京地裁において「より良い生活を求めて他国に移住しようとすることは、人間として自然の情に基づくものであり、他国に移ったのちに先住者と平和裏に共存し得るものならば、そのような行為は何ら人倫に反するものではない」として勝訴した判例が示されました。このような当たり前の市民感覚を共有する裁判官もあらわれていることから、今後も粘り強く闘っていきたいとのことでした。

在留特別許可に関する報告の後、参加者から以下のような意見が表明されました。

研究者からは、「『子どもはいいけど親はダメ』というケースについて、『非正規滞在の子どもたちは日本の将来にとって有望な人材である』として、積極的に訴えてはどうか。」「法律やガイドラインは、普遍性をもつべきなのにそうでないのが不思議」「家族の分断は、海外メディアに取り上げられれば、日本のイメージダウンに繋がる。今後は色々な形でアピールする術を考えてみては」「日本は国際人権条約に加盟していながら、人権条約に反している。子どもの最善の利益を考えるべきなのに裁判所の判断はこれに則していない」といった意見が出されました。

弁護士からは、「学生の仮放免者が、周囲が就職活動をする中、将来が展望できずにいる」「入管は『ガイドライン』を『例示』だとして遵守していない」「国が被告の裁判では、裁判官も官僚機構の中で自身の将来を考慮する」「自由権規約を遵守させるためには、個人通報制度を盛り込んだ選択議定書を遵守させる必要がある」といった意見が出されました。

非正規滞在家族を支援する会からは「なかなか親子一緒の在特をもらえず悩んでいたが、児玉先生の話に勇気づけられた」「ツイッタ―などで反響があるのでプラスにしたい」「嘆願書、署名を出来るだけ集め、お願いするしかないと思う」といった意見が出されました。

APFSのメンバーからは、「最近の仮放免者の増加傾向は、法務省が人道的配慮をしているというポーズではないかとの見方がある」「否定的な意見もあるが、関心をプラス方向にむけられないか」「親子の壁や在特の基準を明示させる必要がある」といった意見が出されました。

意見交換会を継続して実施し、具体的な方策を検討することを確認し、閉会となりました。