スラジュ弁護団の関聡介弁護士より、以下の報告をいただきましたので掲載いたします。
スラジュ弁護団 関聡介弁護士
2015年9月14日、13時半から、法医学者で名古屋大学名誉教授の勝又義直証人に対する尋問が行われました。この尋問は今年4月8日の期日で採用決定されたものですが、勝又証人の予定が確保できないとのことで遅れ、ようやく今般実施されるに至ったものです。
勝俣教授の上京(東京高裁への出頭)が難しいとのことで出張尋問の方式となり、名古屋高裁の法廷を借りる形で非公開での証人尋問が施行されました。
そのような事情で、残念ながら勝又証人尋問を支援者の方々には傍聴していただけませんでしたので、その状況についてごく簡単に報告致します。(ご質問等がございましたら、次回の報告集会等の機会にお寄せ下さい)
この日法廷に出頭したのは勝俣医師のほか、裁判官1名(受命裁判官の左陪席)、書記官・廷吏、当方はスラジュさんの奥様、児玉・安孫子・野原・関の弁護士4名、国側は何と11~12人ものコスト感覚無視の大所帯で東京からやって来ました。
前述のように既に5か月前に尋問決定がされていたにもかかわらず、実は、尋問前週の9月7日になって突然国側から勝又教授の補充の陳述書(本文が9頁もあるもの)が提出されました。このことにつき、期日冒頭において、児玉弁護士から国側に対して今頃になって提出した理由を求釈明しましたが、国側は「一生懸命準備した結果としてこの時期になってしまった」という子どものような回答しかしませんでした。
国側の主尋問は、ほぼこの補充陳述書をなぞる内容で、20分で終了しました。
これに対して、当方からは、今回の尋問担当の野原弁護士と安孫子弁護士が反対尋問を40分ほど行いました。医学的な内容となるので、ここでは詳細は省略しますが、ポイントとされるのは、①勝俣医師が心臓疾患(CTAVN等)による死亡だと判断していることに対する弾劾、②逆に勝俣医師が窒息死を否定していることに対する弾劾、③スラジュ氏のご遺体の直腸体温が比較的高温であったことが本人による激しい抵抗を示しているとの見解に対する弾劾、④勝俣医師の意見が、一審で国が申請した田鎖医師の所見とも齟齬していることの指摘、⑤そして、勝俣医師が、本件解剖や臓器の鑑定に直接には一切関与しない状態で文字どおりの「机上」の議論をしているに過ぎないことの指摘――といったあたりです。
勝俣医師は、一つ質問すると長々と答える人物で、なかなか反対尋問もしにくかったとはいえ、そもそも本件裁判でずっと話題になっている「CTAVN」(心臓房室結節の嚢胞状腫瘍)という用語すらも頭に入っていない様子であり、心臓関係には詳しくないことや、田鎖証言との関係についても正確に説明できない状況であること、また直腸温が高い点についても必ずしもスラジュ氏の激しい抵抗を裏付けるものとは言えないこと等が、反対尋問で印象づけられたのではないかと思われます。
これによって、控訴審での立証は実質的にほぼ終了となりますので、当事者双方は、速やかにまとめの準備書面を作成して提出する流れとなります。次回期日は、11月18日(水)10時00分より東京高裁825法廷での口頭弁論が予定されており、控訴審の審理はこの日で終結し、次々回が控訴審判決言渡となる見通しです。引き続きご支援の程よろしくお願い致します。
※なお、今回の名古屋での尋問のための交通費のうち合計4名分については、APFSさんのカンパによって賄われましたので、この場をお借りして御報告と御礼を申し上げます。